地熱発電とは、地球の内部に蓄えられた地熱によって発生する蒸気を利用して発電する方法です。
地下奥深くにある地熱は主に地球の火山活動によって作られている熱で、これを利用して電力を生み出しても二酸化炭素の排出量が極めて少ないため、温暖化防止にも役に立つ環境に優しいエネルギーとなっています。
火力発電や風力発電と比べると知名度は低いですが、日本に向いている発電方法であるうえ、環境に優しい地熱発電はこれから注目が高まっていくと思います。
他の自然エネルギー(風力発電や太陽光発電など)と共に、今後の世界のエネルギー市場を担っていくのではないでしょうか。
発電の仕組み
(出典:JOGMEC)
地下700メートルから3000メートル前後の長く深い井戸を掘って、そこから蒸気をくみ上げて取り出し、その蒸気を利用してタービンを回すという仕組みです。
歴史の短い新しい発電方法と思われることも多いですが、地熱発電は100年以上の歴史を誇ります。1904年にイタリアのラルデレロという都市で生まれ、商業施設として発電を開始したのが1913年のことです。
日本では1925年に試験が行われ、その後1966年に初めて地熱発電所が誕生しました。
日本は使用する化石燃料のほとんどが海外から輸入していることから、一般的に天然資源の乏しい国とされていますが、そんな日本の強みとなり得るのが、この地熱発電です。
火力発電に必要な天然ガスや石炭などの化石燃料は不要で、純粋に地下深くにある地熱さえあれば発電することができます。
なぜこの地熱が日本の強みになる可能性があるのかというと、それは日本の地熱資源が豊富であるからです。
世界的に見ても指折りの地熱大国と言えます。ここ数年で地熱発電に着目したドキュメンタリー番組やドラマなどがいくつも制作されていますので、テレビで見て知っているという方も少なくないのではないでしょうか。
また、地熱は枯渇の心配がない再生可能エネルギーの一種です。
私たちが普段何気なく使っているガスや石油などはいずれ使い切ってしまう恐れのある枯渇製エネルギーですので、再生可能であるという点はとても大きなメリットとなります。
メリット | デメリット |
---|---|
二酸化炭素を排出しない | 開発費や調査費が高い |
再生可能エネルギーである | 発電所建設の調査から発電所稼働までの期間が長い |
朝から晩まで安定した発電が可能 | 比較的規模が大きくなるため、周囲の景観に影響を及ぼす |
季節や天候の変化による影響を受けない | 僅かながら温泉の泉質や湯量に影響を与える可能性がある |
地熱量が世界3位である日本に向いている | 国定公園や国立公園などといった開発規制が設けられている場所に熱源が多い |
もっと詳しく:地熱発電のメリット・長所 | もっと詳しく:地熱発電のデメリット・問題点・危険性 |
地熱発電の種類
発電の仕組みは冒頭の通りですが、細かく分けると3つの方式が存在します。
蒸気が熱水を含まない場合に利用される「ドライスチーム」、蒸気に多くの熱水が含まれている場合に利用される「フラッシュサイクル」、水よりも低沸点の媒体を沸騰させてタービンを回す「バイナリーサイクル」という3つの方式です。
日本では主に2番目の「フラッシュサイクル」が利用されています。
また、地熱発電に似た高温岩体発電や温泉発電なども併せてご紹介します。
ドライスチーム
最も簡単な方法です。日本でも一部ではありますがこの方式がとられている発電所があります。
地熱によって生じた天然の水蒸気が熱水をほとんど含んでいない場合の方法で、簡単な除湿処理を行った後にタービンに蒸気を送ります。
フラッシュサイクル
前述の通り日本で主流となっている方法です。
水蒸気に熱水が含まれている場合はその熱水を取り除く必要があります。そのために水蒸気を一度汽水分離器という容器に通して、そしてタービンに熱水が取り除かれた蒸気を送ります。
バイナリーサイクル
天然の水蒸気を得ることができないものの、非常に高温な熱水は得ることができるという場合に利用される方法です。
熱水を利用して沸点の低いアンモニアやフロンなどを沸騰させて、その蒸気でタービンを回します。
高温岩体発電
こちらは熱水も水蒸気も少ない場合に行われる方法です。
地上もしくは地表近くまで出てくる熱水や水蒸気が少なくても、その地下に高温の岩体が存在していることが判明しているのであれば、そこまで水を送り込んで水圧で岩を砕き、そして熱水や水蒸気を得ることができます。
温泉発電
熱水が湧出しているものの、その熱水の温度が高すぎて、温泉として入浴するために50度前後まで温度を下げる必要がある場合、その余剰分の熱エネルギーを活用して発電することもできます。
まだ全国的に普及はしていませんが、温度の高い源泉を多く持つ日本に特に向いていると言われています。
マグマ発電
世界的に見てもまだ行われていない未来の発電方式です。地下の奥深くにはマグマが溜まっていて、そのマグマが溜まっているマグマだまり周辺の非常に高温の熱を利用して発電を行います。
賛成派と反対派
原子力発電と異なり、地熱発電には賛成派と反対派の明確な対立構造はありません。
というよりも、地熱発電そのものがまだ一般的に広く知られている発電方法ではないため、テレビ・雑誌・インターネットなどといったメディアでもあまり取り上げられることがないのです。
日本は海に囲まれているとはいえ、火山が多いことから地熱発電をするには向いていると言われています。
再生可能エネルギーで環境にも優しいのですが、日本の文化である「温泉」に与える影響が不明瞭なため、温泉地で観光業を営んでいらっしゃる方々を中心に反対意見も多いとされています。
賛成の声・反対の声は以下の各ページからお読み頂けます。
日本の地熱発電所一覧
化石燃料の多くを海外からの輸入に頼っていることに加え、地熱が多量に存在している日本にとって、地熱発電は非常に適した発電方法と言うことができます。
しかし、デメリットや問題点も残されていることから、まだまだ普及しているとは言えないのが現状です。
東日本
東日本という括りにしましたが、北海道に1つ、東京の八丈島に1つある以外は、全て東北地方に存在しています。電力会社と民間企業が共同で運営しているところもあれば、民間企業が独立して運営を行っているところもあります。
ちなみに日本で初めての実用地熱発電所として営業をスタートさせたのは、表の中央上部に登場している「松川地熱発電所」です。日本重化学工業株式会社によって運営されているこちらの発電所は1966年10月にスタートしました。
ですので、既に半世紀以上にも渡って営業を続けているということになります。
名称 | 所在地 | 運営企業 |
---|---|---|
森地熱発電所 | 北海道茅部郡森町 | 北海道電力 道南地熱エネルギー |
大沼地熱発電所 | 秋田県鹿角市 | 三菱マテリアル |
澄川地熱発電所 | 秋田県鹿角市 | 東北電力 三菱マテリアル |
松川地熱発電所 | 岩手県八幡平市松川温泉 | 日本重化学工業 |
葛根田地熱発電所1号 | 岩手県雫石町 | 東北電力 日本重化学工業 |
葛根田地熱発電所2号 | 岩手県雫石町 | 東北電力 東北地熱エネルギー |
上の岱地熱発電所 | 秋田県湯沢市 | 東北電力 秋田地熱エネルギー |
鬼首地熱発電所 | 宮城県大崎市鳴子温泉 | 電源開発 |
柳津西山地熱発電所 | 福島県河沼郡柳津町 | 東北電力 奥会津地熱 |
八丈島地熱発電所 | 東京都八丈町 | 東京電力 |
西日本
こちらは西日本という区分になっておりますが、所在地をご覧頂ければ分かりますように、全ての発電所が九州地方に集中しています。
特に、温泉の源泉数と湧出量がが日本一で屈指の温泉街として知られている「別府温泉」や、源泉数全国第2位、湧出量全国第3位の「湯布院温泉」がある大分県に多くの発電所が設けられています。
その大分県にある八丁原地熱発電所は日本で最大の地熱発電所として知られています。数百~数万キロワット程度の容量しか持たない地熱発電所がほとんどである中、こちらはなんと約11万キロワットもの容量をもっています。
ちなみに、九州地方ということで九州電力が管轄している施設が多いのですが、中には民間企業が独自で運営しているところもあります。
名称 | 所在地 | 運営企業 |
---|---|---|
岳の湯地熱発電所 | 熊本県阿蘇郡小国町 | 廣瀬商事 |
杉乃井地熱発電所 | 大分県別府市観海寺 | 杉乃井ホテル |
滝上地熱発電所 | 大分県玖珠郡九重町 | 九州電力 出光大分地熱 |
大岳地熱発電所 | 大分県玖珠郡九重町 | 九州電力 |
八丁原地熱発電所1号 | 大分県玖珠郡九重町 | 九州電力 |
八丁原地熱発電所2号 | 大分県玖珠郡九重町 | 九州電力 |
九重地熱発電所 | 大分県玖珠郡九重町 | 九重観光ホテル |
大霧地熱発電所 | 鹿児島県霧島市牧園町 | 九州電力 日鉄鹿児島地熱 |
霧島国際ホテル地熱発電所 | 鹿児島県霧島市牧園町 | 大和紡観光 |
山川地熱発電所 | 鹿児島県指宿市山川 | 九州電力 九州地熱 |