世界的に見て、今最も注目を集めている発電方式ではないでしょうか。発展途上国を中心に新たな原子力発電所の設置が進められている一方で、先進国では原子力発電を止めるべきだとの意見も出ています。

莫大な発電量を得られるのですが、万が一事故が起きるとチェルノブイリや福島での事故のように、被害が広範囲にわたってしまうという問題もあります。こちらのページではそんな原子力発電について色々とご紹介しています。

発電の仕組み

原子力発電の仕組み
(出典:中国電力

原子力発電の特徴は「核燃料を用いる」という点です。原子核が核分裂をする際に発生する熱を利用して蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して発電します。

最後の「蒸気でタービンを回す」という部分は、火力発電地熱発電バイオマス発電などといった他の発電方法でも共通しています。

これらの発電方法と大きく異なるのが使用する燃料です。

前述の通り、原子力発電では核燃料を使用するため、短時間でも熱を豊富に得ることができます。

熱があればあるほど水を熱して作り出せる蒸気の量も増えますので、安定的に多くの発電を行うことができると言い換えることもできます。

単に発電量が大きくて安定しているだけであれば、火力発電でも同様のことが言えますが、さらに原子力発電は二酸化炭素排出量が極めて小さいというメリットもあります。

火力発電も二酸化炭素排出量削減に向けて技術開発が進められていますが、それでも原子力発電とは比較できるレベルではありません。

メリット デメリット
技術を海外へ輸出できる 放射性廃棄物の始末が困難
二酸化炭素の排出量が小さい 燃料は海外からの輸入に頼っている
発電量の割に燃料コストが安い 事故が起きると被害が大きくなりやすい
高い出力と安定した発電が可能 被害を与えた場合の賠償金が高額になりやすい
発電所を設置した街への経済効果が大きい 原子力や原子力発電に関する技術者が不足気味である
もっと詳しく:原子力発電のメリット・長所 もっと詳しく:原子力発電のデメリット・問題点・危険性

火力発電との違い

仕組みは火力発電ととても似ているということを先にご紹介致しましたが、それでは原子力発電と火力発電はどこが違うのでしょうか。以下にそれぞれの発電までの仕組みと手順をまとめてみました。

火力発電 原子力発電
ボイラーで燃料(天然ガス・石炭・石油など)を燃やす 原子炉で燃料(ウラン)の核分裂を起こす
燃やした熱を利用して水を沸騰させる 核分裂で発生した熱を利用して水を沸騰させる
沸騰した水から発生する水蒸気でタービンを回す
タービンは発電機に繋がれていて、電力を生み出す

ご覧頂ける通り、おおまかな仕組みは同様ですが、異なるのは最初の2項目です。火力発電ではボイラーで化石燃料を燃やして熱を得ますが、原子力発電では原子炉でウランの核分裂を起こして熱を得ます。

原子炉の種類

核分裂を発生させる原子炉にはいくつかの種類があります。日本で主に使われているのは最初に挙げる軽水炉です。その他の原子炉と併せてご紹介します。

軽水炉

核分裂後に放出される中性子の速度を下げるための減速材に軽水(普通の水)を使う原子炉のことです。

「沸騰水型軽水炉(BWR)」と「加圧水型軽水炉(PWR)」と更に細かく分類することができますが、日本では両方の種類が設けられています。

軽水炉は核兵器の製造に適さないことや、プラントの建設費が安価であることなどから、原子力発電所の主流となっています。

重水炉

減速材に重水(普通の水より比重の大きい水)を使う原子炉のことです。

濃縮していない天然ウラン(濃縮ウランより安い)が利用できるというメリットがあり、天然ウラン資源が豊富なカナダなどで利用されています。ちなみに軽水炉とは逆に核兵器の製造に適しているという懸念もあります。

黒鉛炉

減速材に黒鉛(炭素)を使う原子炉のことです。

黒鉛減速原子炉と呼ばれることもあります。重水炉と同様には濃縮していない天然ウランを燃料として使用できるという特徴があります。日本で最初に導入された原子力発電所である東海原発(運転終了)がこちらの黒鉛炉でした。

高速炉

高速中性子による核分裂反応の際に生じる熱を利用するタイプの原子炉です。

新世代の原子炉と言われていて、現在も研究が続けられています。日本では福井県にある「もんじゅ」がこちらに該当します。

日本の原子力発電と世界の原子力発電

原子力発電を活用しているのは日本だけではありません。世界的にも推進と廃止の両方の流れが起きています。

世界と比較して日本の原子力発電はどのような点が異なっているのか、また原子力発電の世界シェアはどの程度なのかなどといったテーマをご紹介します。

日本の原子力発電

1966年に東海発電所(東海原発)ができたのが始まりです。3年前の1963年から同地で実験や研究が行われており、1966年に商用原子力発電所としてスタートしました。

現在は「沸騰水型軽水炉(BWR)」と「加圧水型軽水炉(PWR)」という2種類の軽水炉が主流となっていますが、東海発電所ではイギリス製の黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉(GCR)が採用されました。

なお、東海発電所は既に運転を停止しており、今後原子炉を解体する作業に移っていきます。

日本の原子力発電において、ターニングポイントとなったのが、2011年の東日本大震災に起因して発生した福島原発事故です。

この時には放射性物質が大量に放出され、福島県のみならず東北地方や関東地方にも多大な影響を及ぼしました。この事故は国際原子力事象評価尺度で最も高い事故レベルである「レベル7」に定められています。

福島原発事故が起きる前までは、日本の発電の約23%を原子力発電でまかなっていましたが、事故後は急減し、2020年現在では2%にも満たない数値となっています。

世界の原子力発電

全世界見ると450以上もの原子炉が稼働されています。また、現在も新設が進められているものも少なくありません。世界で最も多くの原子力発電所を持っているのはアメリカで、次いでフランス・中国・日本・ロシアと続きます。

アメリカとロシアは原子力発電の割合が総発電量の15%~25%ほど、日本と中国は5%未満ですが、フランスはなんと75%以上にもなります。

原子力推進の国

エネルギー政策「国際原子力エネルギー協力フレームワーク」に参加している国、もしくは参加を表明している国が主に該当します。

前述の日本・アメリカ・フランス・ロシア・中国のほか、カナダ・イギリス・ブルガリア・オーストラリア・韓国などが挙げられます。

なお、日本に関しては「国際原子力エネルギー協力フレームワーク」に参加していますが、政府の新エネルギー政策では2030年代に原発ゼロを目指すと打ち出されているため、推進の国というよりは廃止の国に含まれるかと思います。

原子力廃止の国

廃止の方向に最も進んでいるのはドイツです。現時点で既に17あるうちの7つを廃止していて、2022年までには17全てを廃止すると発表しています。

スイスも2034年までに全ての原発を廃止すると決めています。イタリア・スウェーデンも廃止の方向に進んでる国です。

賛成派と反対派

先の「日本と世界の原子力発電」の項目で、海外でも推進を続けている国もあれば、逆に完全に脱原発を目指すと表明している国もあることをご紹介しましたが、日本でも賛成派と反対派が存在しています。

これからも、良い意味でも悪い意味でも注目を集め続けることは間違いなさそうですが、やはり最大の焦点となるのはその「安全性」です。万が一が起きることも許されない、前よりも更に徹底した安全管理が求められるでしょう。

賛成の声・反対の声は以下の各ページからお読み頂けます。

日本の原子力発電所一覧

2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故によって、日本にある他の原子力発電所にも注目が集まるようになりました。そこでこちらのページでは日本にある原子力発電施設をエリアごとにまとめてご紹介したいと思います。

北海道

北海道には泊発電所(とまりはつでんしょ)があります。3号機まで原子炉があり、全てが「加圧水型軽水炉」となっています。1号機と2号機はそれぞれ80年代90年代に運転を開始し、3号機は2009年に運転を開始しました。

名称 所在地 運営企業
泊発電所 北海道古宇郡泊村 北海道電力

東北地方

東北には4つの原子力発電所がありますが、2011年3月に起きた東日本大震災の影響でいずれも運転を停止しております。なお、事故を起こした福島第一原子力発電所は1号機から4号機まで廃炉にすると発表されています。

名称 所在地 運営企業
東通原子力発電所 青森県下北郡東通村 東北電力・東京電力
女川原子力発電所 宮城県牡鹿郡女川町 東北電力
福島第一原子力発電所 福島県双葉郡大熊町・双葉町 東京電力
福島第二原子力発電所 福島県双葉郡富岡町 東京電力

関東地方

関東地方にあるのは東海第二発電所のみです。こちらも震災の影響で現在運転を停止しています。なお「第二」の名称からも想像が付きますが、1998年までは「東海発電所」が運転されていました。こちらは廃炉にされる予定です。

名称 所在地 運営企業
東海第二発電所 茨城県那珂郡東海村 日本原子力発電

中部地方

中部地方では北陸三県に施設が集中していますが、特に福井県に多くの施設が集まっています。数も多いですが、原子炉の種類も「沸騰水型軽水炉」「加圧水型軽水炉」「高速増殖炉」と異なっています。

名称 所在地 運営企業
浜岡原子力発電所 静岡県御前崎市 中部電力
柏崎刈羽原子力発電所 新潟県柏崎市 東京電力
志賀原子力発電所 石川県羽咋郡志賀町 北陸電力
敦賀発電所 福井県敦賀市 日本原子力発電
美浜発電所 福井県三方郡美浜町 関西電力
大飯発電所 福井県大飯郡おおい町 関西電力
高浜発電所 福井県大飯郡高浜町 関西電力
もんじゅ 福井県敦賀市 日本原子力研究開発機構

近畿地方

近畿地方には原子力発電所は1箇所もありません。かつて三重県度会郡の南島町と紀勢町に広がっている芦浜地区に「芦浜原子力発電所」の建設計画がありましたが、地元からの反対の声が大きく、2000年に計画は中止となりました。

中国・四国地方

中国地方と四国地方にそれぞれ1つずつ施設が設置されています。島根原子力発電所では「沸騰水型軽水炉」が、伊方発電所では「加圧水型原子炉」が利用されています。両施設とも複数の原子炉を運用しています。

名称 所在地 運営企業
島根原子力発電所 島根県松江市 中国電力
伊方発電所 愛媛県西宇和郡伊方町 四国電力

九州地方

九州地方には佐賀県と鹿児島県にそれぞれ1つずつ施設が設置されています。いずれも複数の原子炉を運用しています。なお、玄海原子力発電所には見学施設として「玄海エネルギーパーク」も設けられています。

名称 所在地 運営企業
玄海原子力発電所 佐賀県東松浦郡玄海町 九州電力
川内原子力発電所 鹿児島県薩摩川内市 九州電力