バイオマス発電施設の全体写真

「バイオマス」もしくは「バイオマス発電」という言葉を見聞きしたことはありませんでしょうか。

かつてはあまり知られていないマイナーな発電方法でしたが、自然エネルギーへの注目の高まりと共に、少しずつではありますが一般にも知られるようになってきています。

「バイオマス発電」という名前だけ見ると、最先端の技術を使った複雑で難しい発電方法であるような印象を受けるかもしれませんが、実は仕組みは難しくありません。どうやって電気を作り出しているのかは、すぐに理解することができます。

また、こちらでは「バイオマス」そのものの種類についても触れています。

発電の仕組み

バイオマス発電の仕組み
(出典:SBエナジー

電気を作る仕組みは火力発電とよく似ています。ボイラーで燃料を燃やすことで水蒸気を作り、その水蒸気の力で発電タービンを回すという流れです。ですので、電気を作るまでの流れに関しては、火力発電と同じと言えます。

  1. ボイラーで燃料を燃やす
  2. 燃やすことで発生する熱を利用して水を熱する
  3. 熱された水が沸騰して水蒸気を作る
  4. 出てきた水蒸気が発電用のタービンを回す

簡単にまとめてしまうと、上の4つの手順から成り立っています。学生時代の理科の授業などで習ったことがあるという方も多いのではないでしょうか。

そして、バイオマスとは有機資源のことを指します。植物・廃材・生ゴミ・下水・動物の排泄物などといった様々なものが有機資源に含まれます。

これらの有機資源は枯渇することがないため、風力発電地熱発電などといった自然のエネルギーを用いた発電方法と同様に、バイオマス発電は再生可能エネルギーに分類されています。

メリット デメリット
資源の有効活用になる バイオマス資源の収集にコストがかかる
再生可能エネルギーである 他の再生可能エネルギーと比べると注目度も普及レベルも低い
固定価格買取制度の対象である 本来食用のものを燃料として使用することで、対象となる食品が値上がりする可能性がある
ゴミや廃材を減らし、地域環境の向上が見込める バイオマス資源栽培のために自然破壊をして耕地を拡大する事業者が出てくる可能性がある
カーボンニュートラル(二酸化炭素を増加させないという考え方)である 二酸化炭素を増加させないというだけで、まったく排出しない訳ではない
もっと詳しく:バイオマス発電のメリット・長所 もっと詳しく:バイオマス発電のデメリット・問題点・危険性

火力発電との違い

これで火力発電とバイオマス発電が同じ仕組みを利用して電気を作っているということが分かりましたが、それではなぜバイオマス発電は自然エネルギーに分類されているのに対し、火力発電はそうではないのでしょうか。

その答えは「燃料」にあります。上の手順の1番のところに「燃料を燃やす」と書いてありますが、実はバイオマス発電と火力発電とでは、利用している燃料が異なるのです。この燃料の違いが自然エネルギーか否かを分けています。

バイオマス発電で使用する燃料は「バイオマス」です。一方で、火力発電で使用される燃料は化石燃料(石炭・石油・天然ガスなど)です。

化石燃料は燃やすと多くの二酸化炭素を排出しますが、バイオマスにはカーボンニュートラルという考え方ができるため、二酸化炭素を増加させないという特徴があります。

つまり、カーボンニュートラルとは「二酸化炭素を増加させない」という考え方を意味します。

これは、バイオマスは燃料として燃やされる際に排出する二酸化炭素と同じ量の二酸化炭素を、燃やされるまでに吸収してきているため、結果的に大気中に存在する二酸化炭素の量は変わらないという考え方です。

バイオマスの種類

バイオマスとは「枯渇の恐れがない生物資源」のことです。再生可能資源の一種と解説されることもありますが、このままでは何を指すのかよく分かりませんので、次に種類別に具体的な資源を挙げてみたいと思います。

廃棄物系 廃棄物系バイオマスとは、工場や一般家庭などから大量に出る資源を指します。具体的には「木屑・生ゴミ・紙・家畜の糞尿・食品廃材・下水汚泥」などのことです。
未利用系 未利用系バイオマスとは、他にあまり使用用途のない資源を指します。具体的には「稲わら・麦わら・もみがら・野草・間伐材・被害木」などのことです。
栽培作物系 栽培作物系バイオマスとは、作物を由来とした資源を指します。具体的には「さとうきび・てんさい・トウモロコシ・菜種・落花生」などのことです。

賛成派と反対派

バイオマス発電に関しては、原子力発電のような明確な賛成派と反対派という構図はありません。まだあまり知られていないマイナーな発電方法であることや、メディアで取り上げられることがあまりないことなどが要因かと思います。

そんな中でも賛成派の意見として多いのは、やはり「自然エネルギーであること」です。自然環境に優しいエコなエネルギーであるという点は大きな魅力に違いありません。

一方で反対派の意見で多いのは「コストや採算性の問題」です。他の自然エネルギーに資本を投資するべきという声もよく聞かれます。

賛成の声・反対の声は以下の各ページからお読み頂けます。

バイオマス発電所の見学レポート

あいち臨空新エネルギー実証研究エリア(現在は閉業)にあるバイオマス発電施設を見学してきました!

バイオマス利用スターリングエンジン発電

まずは屋外にある「バイオマス燃料を利用したスターリングエンジン発電」についての解説を受けました。こちらのスターリンクエンジンとバイオマス燃料を利用した発電システムは中部電力によって実証研究が行われています。

スターリングエンジンは外からの熱で動く外燃機関で、様々な熱源で動かすことができるため、バイオマスと同様に今後の発展が期待されているエネルギー関連技術と言えます。

あいち臨空新エネルギー実証研究エリアの入り口から一番奥に大きな発電機が設けられていて、外から見るとまるで小さな工場のようにも見えます。

こちらの発電設備ではそんなバイオマスの中でも、木くずなどの「木質バイオマス」と呼ばれるものを燃料として使用し、発電を行っています。

バイオマス利用スターリングエンジン発電システムの解説をしている看板

看板の左半分を拡大した写真

看板の右半分を拡大した写真

バイオマス利用スターリングエンジン発電システムの全体写真

発電の核となる部分

発電システムの操作を行うパネル

スターリングエンジンの写真

バイオマス発電施設の全体写真

新エネ体験館での解説

新エネ体験館の中部電力のブース

あいち臨空新エネルギー実証研究エリアの一施設である「新エネ体験館」という施設内には、中部電力のブースも設けられています。こちらのブースでスターリングエンジンとバイオマスに関する様々な解説が行われています。

日本のバイオマス発電所一覧

日本全国にあるバイオマス発電所をまとめてみました。バイオマス資源が手に入りやすい北海道・東北地方や九州地方に多数の発電所があります。

固定価格買取制度の導入によって、これから更に発電所の数が増えていくことが予想されますが、新しい発電所ができた際には随時情報を追加していきます。

北海道

単独の都道府県でみると、北海道には最も多くのバイオマス発電所があります。牧場や農場に併設されているところが多く、規模は小さめのものが多いのが特徴です。耕地の広い北海道は、これからも発電所の数が増えていくのではないかと思います。

名称 所在地 運営企業
津別単板協同組合バイオマスエネルギーセンター 北海道網走郡津別町 津別単板協同組合
龍田牧場バイオマス発電所 北海道常呂郡訓子府町 龍田牧場
房谷牧場バイオマス発電所 北海道河東郡士幌町 房谷牧場
鈴木牧場バイオマス発電所 北海道河東郡士幌町 鈴木牧場
江別浄化センター消化ガスコージェネ発電施設 北海道江別市工栄町 江別市
仁成ファームバイオマス発電設備 北海道釧路市阿寒町 仁成ファーム
町村農場バイオマス発電設備 北海道江別市 町村農場

東北地方

東北は北海道と条件的に似ているところもあるため、発電所の数も多いような印象を受けますが、実はあまり多くはありません。ただ、牧場等に併設されているタイプとは異なり、独立して運営されているところの割合が高くなっています。

名称 所在地 運営企業
バイオマスパワーしずくいし発電所 岩手県岩手郡雫石町 バイオマスパワーしずくいし
菱秋木材株式会社 1号発電所 秋田県能代市 菱秋木材
能代バイオマス発電施設 秋田県能代市 能代森林資源利用協同組合
石巻合板工業株式会社発電所 宮城県石巻市潮見町 石巻合板工業
グリーン発電会津 木質バイオマス発電所 福島県会津若松市河東町 グリーン発電会津
木質専焼バイオマス発電所 大信発電所 福島県白河市 白河ウッドパワー

関東地方

関東地方には大規模な火力発電所や水力発電所はあるものの、バイオマスを利用している発電所はそれほど多くはありません。ただ、あまり知られてはいませんが、都内にもバイオマス発電を行っているところがあります。

名称 所在地 運営企業
吾妻木質バイオマス発電所 群馬県吾妻郡東吾妻町 吾妻バイオパワー
神之池バイオマス発電所 茨城県神栖市 神之池バイオエネルギー
ちちぶバイオマス元気村発電所 埼玉県秩父市 秩父市
川崎バイオマス発電所 神奈川県川崎市 川崎バイオマス発電
バイオエナジー株式会社 食品循環資源リサイクル施設発電設備 東京都大田区 バイオエナジー
森ヶ崎発電所 東京都大田区 東京都下水道局・森ヶ崎エナジーサービス

中部地方

自然エネルギーだと太陽光発電所と水力発電所がいくつもあるエリアですが、バイオマスに関してはあまり積極的ではないようです。現在のところ、新潟県と岐阜県の二つの県にのみ施設が設けられています。

名称 所在地 運営企業
サミット明星パワー 糸魚川バイオマス発電所 新潟県糸魚川市 サミット明星パワー
川辺木質バイオマス発電所 岐阜県加茂郡川辺町 川辺バイオマス発電
森林資源活用センター発電所「森の発電所」 岐阜県加茂郡白川町 東濃ひのき製品流通協同組合

近畿地方

近畿エリアも中部と同様に、バイオマスを使っている発電所はほとんどありません。もともとこのエリアは面積が小さいため、他の発電所も多くはないのですが、バイオマスに関しては特に少なめです。

名称 所在地 運営企業
日本ノボパン木質バイオマス発電所 大阪府堺市 日本ノボパン工業

中国・四国地方

このエリアでは中国地方に発電所が集中しています。集中と言うほどではないかもしれませんが、岡山県・広島県・山口県の瀬戸内海に面している三県にそれぞれ施設が建てられていて、現在も営業を行っています。

名称 所在地 運営企業
銘建工業株式会社本社工場 エコ発電所 岡山県真庭市 銘建工業
中国木材本社工場 木質バイオマス発電プラント 広島県呉市 中国木材
岩国バイオマス発電所 山口県岩国市 ミツウロコ岩国発電所

九州地方

地方別に分類すると九州が最も多くのバイオマス発電所を有しています。九州最大の都市である福岡にはありませんが、宮崎県と沖縄県に複数の発電所があります。特に沖縄県は規模は小さいものの、施設の数は多めです。

名称 所在地 運営企業
バイオマス発電所「豪力」 長崎県佐世保市 環境リサイクルエネルギー
木質専焼バイオマス発電所 日田発電所 大分県日田市 日田ウッドパワー
株式会社大晶 1号発電所・2号発電所 熊本県合志市 大晶
南宮崎ウッドパワー発電所 宮崎県日南市 ウッドエナジー協同組合
南国興産バイオマス発電設備 宮崎県都城市 南国興産
みやざきバイオマスリサイクル発電所 宮崎県児湯郡川南町 みやざきバイオマスリサイクル
南西糖業株式会社 徳和瀬工場発電所 第2号発電設備 鹿児島県大島郡徳之島町 南西糖業
宮古製糖株式会社 伊良部工場バガス発電施設 沖縄県宮古島市 日本分蜜糖工業会
球陽製糖株式会社 バガス発電施設 沖縄県うるま市 日本分蜜糖工業会
北大東製糖株式会社 バガス発電施設 沖縄県島尻郡 日本分蜜糖工業会
大東糖業株式会社 バガス発電施設 沖縄県島尻郡 日本分蜜糖工業会
石垣島製糖株式会社 バガス発電施設 沖縄県石垣市 日本分蜜糖工業会
宮古製糖株式会社 バガス発電施設 沖縄県宮古島市 日本分蜜糖工業会