水平軸型小型風力発電システムの解説をしている看板

地球環境に極めて優しい発電方式であることと、他の燃料を必要としない再生可能エネルギーであることから、世界的に注目を集めている風力発電。日本ではまだまだですが、全世界の発電量も増加し続けています。

太陽光発電と並んで、今後の世界の発電の中心になる可能性を秘めている発電方式です。クリーンで再生可能な風力発電の未来に期待がかかります。

発電の仕組み

風力発電の仕組み
(出典:中部電力

風力発電の最大の特徴は「風」という自然の力を用いている点です。

白くて大きな風車がいくつも並んでいる姿を見たことはありませんか?それが風力発電です。風の力を利用して風車をまわし、その回転が発電機に伝わって電気を生み出すという仕組みです。

風力エネルギーは「風を受ける面積」と「空気の密度」と「風速」の3乗に比例するため、風力発電で用いられている風車は常に風の力を最大限に活かすことができるようにして作られています。

もちろん、台風や竜巻など異常なほど風が強すぎるときには可変ピッチが自動で働くため、回りすぎて壊れるということもありません。

また、日本は島国で海岸線が長いため、風力を得やすいという点も見逃せません。内陸部と比べると海に面している地域の方が風は吹きやすく、それはつまり風車の羽を回しやすいと言い換えることができます。

羽が回る力を発電機に伝えて発電を行うわけですから、風が吹きやすい地域の方が発電量も当然大きくなります。

最近では洋上風力発電の実証研究も進められています。これは従来のように地上に風車を建設するのではなく、海上に建設するタイプの風力発電のことを指します。

海上には風を遮るものが何もないため、より多くの風を受けることができるというメリットがあり、今後の風力発電の主流となる可能性も秘めています。

メリット デメリット
二酸化炭素を排出しない 風が吹かないと発電できない
再生可能エネルギーである 騒音被害を発生させる可能性がある
海岸線の長い日本に向いている 風車の羽に鳥が衝突する可能性がある
海上に風車を設置することもできる(洋上風力発電) 山中に設置する場合は自然破壊が起きる
小規模分散型の発電方式であるため、災害や事故があっても全体の稼働率は高い 多額の初期投資が必要となるため、民間事業者にとってはメガソーラーよりも手を出しにくい
もっと詳しく:風力発電のメリット・長所 もっと詳しく:風力発電のデメリット・問題点・危険性

風車の種類

プロペラ型水平軸風車

ジャイロミル型垂直軸風車

風車にはいくつかの種類がありますが、大きく分けると回転軸の方向で「水平軸風車」と「垂直軸風車」の2つに分類されます。前者は地面に対して風車が水平に回り、後者は垂直に回ります。

上の写真は1枚目が水平軸風車のプロペラ型で、2枚目が垂直軸風車のジャイロミル型となります。

多翼型 水平軸風車。細い羽がたくさん集まっている風車です。
プロペラ型 水平軸風車。風力発電の風車と言われて最初に思い浮かぶ典型的な形の風車です。巨大なモノだとかなりのパワーを生み出すことができます。
オランダ型 水平軸風車。オランダやハウステンボスなどで見られるタイプの風車です。
セイルウィング型 水平軸風車。羽が帆を張っているタイプの終車です。
クロスフロー型 垂直軸風車。パワーは小さいですが弱い風でもよくまわるタイプの風車です。
サボニウス型 垂直軸風車。羽が中心部を越えている特徴的な風車です。
ダリウス型 垂直軸風車。羽が楕円のような形でカーブしているタイプの風車です。
ジャイロミル型 垂直軸風車。長方形の形をした羽がついていて、その取り付け角度によって回転力が変わるタイプです。

日本の風力発電と世界の風力発電

冒頭で「日本よりも世界の方が風力発電が進んでいる」といった内容の文章を書きましたが、日本と世界の風力発電がどう違っているのか、そして風力発電の世界シェアはどの程度なのかなど、簡単にまとめてみました。

日本の風力発電

日本では1990年から風力発電所が導入されていますが、最初の数年間は実用と言うよりも研究の側面が強く、それほど導入数も発電量も増えませんでした。

2000年頃から本格的に導入数も発電量も増えてきてはいますが、まだまだ世界基準と比べると普及が進んでいないというのが実情です。

日本の風力発電は全発電量の0.7%しかありません。同じ自然エネルギー(水力発電7.8%・太陽光発電6.5%・バイオマス発電2.2%)と比べても、かなり少ないと言えます。

あまり普及が進まない理由としては…

  1. 台風に耐えうる風車を導入するとコストが上がる
  2. 大量の風車を設置できるだけの平地の確保が困難
  3. 国の政策として、太陽光発電により注力している
  4. 原子力発電で一定以上の発電量をまかなえている

などといった点が挙げられます。

ちなみに日本国内では北海道・青森・秋田・福島・茨城・静岡・島根・鹿児島などといった県が導入数・発電量の多い地域となっています。

世界の風力発電

風力発電に関しては日本よりも海外の方が普及が進んでいます。ここ10年ほどでも急激に伸びていますが、これからも持続して普及が進んでいくと予想されています。

現在は世界の電力需要量の3%ほどしか担っておりませんが、2025年には5%~10%ものシェアを獲得すると言われています。

国で見ていくと中国とアメリカは特に設置容量が増えており、特に中国は断トツで世界第1位の座に座っています。ヨーロッパも普及が進んでいて、特にデンマークやスペインでは国内の電力の2割強を風力発電で補っています。

原子力発電に対する風当たりが強まっている中、クリーンで再生可能なエネルギーを使った風力発電は、世界的にもどんどん伸びていくでしょう。

風車の設置場所の制約もそれほど厳しくはありませんし、海上に設置するということができるのも大きな魅力だと思います。

賛成派と反対派

風力発電には極めて重大な危険性などがないため、原子力発電のように賛成派と反対派が分かりやすく対立することはありませんが、それでも賛成派と反対派が存在しないという訳ではありません。

賛成派の意見として多いのは「環境に優しいエネルギーであること」、一方で反対派の意見で多いのは「騒音や低周波が人体に与える影響について」です。

賛成の声・反対の声は以下の各ページからお読み頂けます。

風力発電所の見学レポート

あいち臨空新エネルギー実証研究エリア(現在は閉業)にて、小型風力発電所の見学をしてきました!

あいち臨空新エネルギー実証研究エリアには「水平軸型」と「垂直軸型」という2つの風力発電施設があります。どちらも小型ですが、しっかりと発電をしています。

水平軸型風力発電

風力発電の問題点の1つに「風切音による騒音」が挙げられますが、こちらではその騒音を低減させるための実証研究がされています。一般的な水平軸型の風車と比べて、ブレードそのものの形と、利用している素材の種類が異なっています。

水平軸型小型風力発電システムの解説をしている看板

水平軸型小型風力発電の左半分を拡大した写真

水平軸型小型風力発電の右半分を拡大した写真

プロペラ型水平軸風車

新エネ体験館での解説

水平軸型小型風力発電装置の実証研究に取り組んでいるのはニッコー社ですが、あいち臨空新エネルギー実証研究エリア内にある新エネ体験館の中にも同社のブースが設けられています。

こちらで風車の解説が行われているほか、従来のブレードと騒音を改称するために改良されたブレードが並べられていて、両方を比較することもできます。

新エネ体験館の中のニッコー社のブース

垂直軸型風力発電

写真のように風車のブレードが地面に向かって垂直に並べられているタイプのものを「垂直軸型」と言います。こちらではその風車に蓄電池と太陽電池を搭載して、より効率的な発電やエネルギーコントロールについての実証研究が行われています。

垂直軸型小型風力発電装置の解説

垂直軸型小型風力発電の左半分を拡大した写真

垂直軸型小型風力発電の右半分を拡大した写真

太陽光発電付きジャイロミル型垂直軸風車

ジャイロミル型垂直軸風車

新エネ体験館での解説

こちらの実証研究を行っているのはシンフォニアテクノロジー社です。同社も新エネ体験館の中にブースを持っています。風力発電だけではなく、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッドカー)に関しての取り組みもされています。

新エネ体験館のシンフォニアテクノロジーのブース

日本の風力発電所一覧

他の国々と比較すると、日本は風力発電がまだまだ普及していないと言われていますが、規模こそ小さいものの、全国に多数の風力発電所が設置され、運営されています。

そこで、こちらで日本にある風力発電所を一覧にしてまとめてご紹介したいと思います。

ただ、数がとても多いので、それなりに規模の大きいところだけを中心にピックアップさせて頂きました。全ての風力発電所を知りたい方はNEDO新エネルギー部よりご確認ください。

現在発電中の風力発電所はもちろんのこと、既に発電を終了している風力発電所も全て網羅されています。更に、発電に使用している風車のメーカーまで把握することができます。

北海道

北海道は面積が広いことや海岸線が長いことから、非常に多くの風力発電施設が設置されています。他の地方と比べてもかなり数が多いのですが、西側に比較的集中している傾向にあります。

名称 所在地 運営企業
宗谷岬ウィンドファーム 北海道稚内市 ユーラスエナジー
花咲風力発電所 北海道根室市 クリーンエナジーファクトリー
CFE昆布盛ウインドファーム 北海道根室市 クリーンエナジーファクトリー
CEFオロロンウインドファーム 北海道留萌郡小平町 クリーンエナジーファクトリー
浜中町風力発電所 北海道根室市 クリーンエナジーファクトリー
さらきとまないウインドファーム 北海道稚内市 電源開発
苫前ウィンビラ発電所 北海道苫前町 電源開発
島牧ウインドファーム 北海道島牧村 電源開発
瀬棚臨海風力発電所 北海道せたな町 電源開発
留萌風力第1発電所 北海道留萌市 エコ・パワー
留萌風力第2発電所 北海道留萌市 エコ・パワー
礼受風力発電所 北海道留萌市 エコ・パワー
追分ソーラン風力発電所 北海道江差町 エコ・パワー
稚内風力第1発電所 北海道稚内市 エコ・パワー
稚内風力第2発電所 北海道稚内市 エコ・パワー
オロロン風力発電所 北海道羽幌町 エコ・パワー
松前風力発電所 北海道松前町 エコ・パワー
瀬棚マリンタウン風力発電所 北海道せたな町 エコ・パワー
根室歯舞風力発電所 北海道根室市 エコ・パワー
厚田風力発電所 北海道石狩市 エコ・パワー

東北地方

東北地方にも数多くの施設がありますが、主に青森県・岩手県・秋田県の3県に集中しています。複数の民間企業がそれぞれ異なる場所に施設を持っていて、規模こそそれほど大きくありませんが、様々な種類のものがあります。

名称 所在地 運営企業
むつ小川原ウィンドファーム 青森県六ヶ所村 エコ・パワー
岩屋ウィンドパーク 青森県東通村 エコ・パワー
岩屋風力発電所 青森県東通村 エコ・パワー
野辺地風力発電所 青森県野辺地町 エコ・パワー
蛇浦風力発電所 青森県風間浦村 エコ・パワー
袖山高原風力発電所 岩手県葛巻町 エコ・パワー
グリーンパワーくずまき風力発電所 岩手県葛巻町 電源開発
釜石広域ウインドファーム 岩手県釜石市・遠野市・大槌町 ユーラスエナジー
秋田新屋ウィンドファーム 秋田県秋田市 エコ・パワー
田代平風力発電所 秋田県鹿角市 ユーラスエナジー
仁賀保高原風力発電所 秋田県にかほ市 電源開発
能代風力発電所 秋田県能代市 東北自然エネルギー開発
たちかわウィンドファーム 山形県庄内町 エコ・パワー
サミットウインドパワー酒田発電所 山形県酒田市 酒田共同火力発電
郡山布引高原風力発電所 福島県郡山市 電源開発
桧山高原風力発電所 福島県田村市・川内村 電源開発

関東地方

関東地方や首都圏にはあまりないのではないのでは?と思われる方も多いかもしれませんが、実は茨城県を中心に複数の施設が存在しています。日本の首都である東京にも複数の風力発電所があります。

名称 所在地 運営企業
ウインド・パワーつくば風力発電所 茨城県つくば市 ウインド・パワー・いばらき
サミットウインドパワー鹿嶋発電所 茨城県鹿嶋市 サミットウインドパワー
波崎ウインドファーム 茨城県神栖市 エコ・パワー
波崎風力発電所 茨城県神栖市 エコ・パワー
ウインド・パワーかみす風力発電所 茨城県神栖市 ウインド・パワー・いばらき
ウインド・パワーはさき風力発電所 茨城県神栖市 ウインド・パワー・いばらき
ウインド・パワー日立化成風力発電所 茨城県神栖市 ウインド・パワー・いばらき
神栖風力発電施設 茨城県神栖市 ミツウロコグリーンエネルギー
袖ヶ浦風力発電所 千葉県袖ヶ浦市 エコ・パワー
銚子ウィンドファーム 千葉県銚子市 エコ・パワー
若洲風力発電施設 東京都江東区若洲3丁目2 江東区
東京臨海風力発電所(東京風ぐるま) 東京都中央防波堤内側埋立地 電源開発
八丈島地熱・風力発電所 東京都八丈島 東京電力
横浜市風力発電所(ハマウィング) 神奈川県横浜市 横浜市
三浦ウィンドパーク(宮川公園の風力発電) 神奈川県三浦市 日本風力開発

中部地方

中部地方は面積こそ広いものの、海岸線はそれほど長くないため、風力発電所はあまり多くありません。静岡県と愛知県という太平洋側の2つの件に施設が集中しています。特に静岡県には数多くの施設が集まっています。

名称 所在地 運営企業
あわら北潟風力発電所 福井県あわら市 電源開発
CEF伊豆熱川ウインドファーム 静岡県賀茂郡東伊豆町 クリーンエナジーファクトリー
磐田ウィンドファーム 静岡県磐田市 エコ・パワー
石廊崎風力発電所 静岡県南伊豆町 電源開発
落居ウインドファーム 静岡県牧之原市 白川電気土木
御前崎風力発電所 静岡県御前崎市 中部電力
風電君(中島浄化センター敷地内) 静岡県静岡市駿河区 静岡市
新舞子マリンパーク風力発電所 愛知県知多市 新舞子マリンパーク
田原臨海風力発電所 愛知県田原市 電源開発
田原風力発電所 愛知県田原市 電源開発

近畿地方

近畿地方も中部地方と同じく、施設の数は多くありません。以下の通り三重県と京都府と兵庫県にそれぞれ設置されています。淡路島でお馴染みのあわじ市にも大きな風車があります。

名称 所在地 運営企業
青山高原ウインドファーム 三重県津市 青山高原ウインドファーム
太鼓山風力発電所 京都府伊根町 京都府
五色風力発電所 兵庫県洲本市 クリーンエネルギー五色
阿那賀の風車 兵庫県南あわじ市 クリーンエナジーファクトリー
CEF南あわじウインドファーム 兵庫県南あわじ市 クリーンエナジーファクトリー

中国・四国地方

日本海側に面している中国地方の島根県・山口県、そして太平洋側に面している四国地方の徳島県・愛媛県・高知県にそれぞれ風力発電所が設置されています。数多くの異なる民間企業や公的団体が運営に乗り出しています。

名称 所在地 運営企業
新出雲風力発電所 島根県出雲市 ユーラスエナジー
キララトゥーリマキ風力発電所 島根県出雲市 出雲市
江津東ウインドファーム風力発電所 島根県江津市 江津ウィンドパワー
江津高野山風力発電所 島根県江津市 島根県
楊貴妃の里ウインドパーク 山口県長門市 電源開発
CEF豊北ウインドファーム 山口県下関市 クリーンエナジーファクトリー
大川原ウインドファーム 徳島県徳島市 大川原ウインドファーム
瀬戸ウインドヒル発電所 愛媛県伊方町 瀬戸ウィンドヒル
伊方ウィンドファーム 愛媛県伊方町 エコ・パワー
佐田岬風力発電所 愛媛県伊方町 大和エネルギー
大豊町風力発電所 高知県大豊町 高知県
葉山風力発電所 高知県津野町 葉山風力発電所
檮原町風力発電所 高知県檮原町 檮原町
大月ウィンドファーム 高知県大月町 グリーンパワーインベストメント

九州地方

九州地方で最も風力発電が盛んに行われているのは鹿児島県です。太平洋に面していることに加えて、独特な形が海岸線の距離を長くしています。また、観光名所としても知られている沖縄県の宮古島にも風車が設置されています。

名称 所在地 運営企業
長崎鹿町ウィンドファーム 長崎県佐世保市 電源開発
五島岐宿風力発電研究所 長崎県五島市 エコ・パワー
阿蘇にしはらウィンドファーム 熊本県阿蘇郡西原村 電源開発
阿蘇おぐにウィンドファーム 熊本県阿蘇郡小国町 電源開発
牟礼ヶ岡ウインドファーム 鹿児島県鹿児島市 南九州クリーンエネルギー
長島風力発電所 鹿児島県出水郡長島町 長島ウインドヒル
野間岬ウインドパーク発電所 鹿児島県南さつま市 九州電力
甑島風力発電所 鹿児島県薩摩川内市 九州電力
南大隅ウインドファーム 鹿児島県南大隅町 電源開発
西平安名岬 沖縄県宮古島市 宮古島市